1 アメリカの排ガス規制の概要・・ざっくりです
ハーレーの母国アメリカは自由で日本からみると割となんでもアリなイメージですが、やっぱり排ガスの規制があります。※騒音規制もありますがここでは排ガス中心でお話しします。
https://en.wikipedia.org/wiki/United_States_emission_standards
アメリカの排ガス規制は特に1999年から段階的に頻繁に規制の基準が厳しくなり現在に至っています。同じ北米マフラーでも年式によって触媒が変わったり、ヘッダーパイプの径が違ったりするのはこれが原因だと思います。
アメリカの排出基準はもともと国(EPA)の基準とカリフォルニア州の基準の2つがあり、カルフォルニアの基準の方が厳しくなっています。
アメリカには現在50の州がありますがそれぞれの州は国(EPA)の基準にするか、カリフォルニアの基準にするかを選べることになっているみたいです。
なのでUS仕様のハーレーダビッドソンは新車の販売のためにアメリカ国内(ドメスティック EPA)仕様とカルフォルニア仕様の2バージョンを用意していたんですね。
※同じ国内なのに仕様の異なるバイクをリリースするのはメーカーにとっては都合よくないと思っていたかもですが、そこは世界のHD。さすがですね。
それが2017年からは国(EPA)もカリフォルニア基準を国内基準として採用することになりました。ひとつになったのでめでたい?のかどっちでしょう?
とにかく2017年以降のアメリカ国内で販売されているハーレーはすべてカリフォルニアの厳しい基準をクリアしたバイクになっています。
2 カスタムや交換時の社外部品を使用するときの問題
ココで問題になってくるのが社外品などを使用し部品を交換したりバイクを改造したりする場合。
アメリカには日本のような厳格な車検制度がないですからね。
改造したりするのは基本自由です。国や州の厳しい規準をクリアして販売されたバイクも改造してしまえばそれはなかったことになります。
なのでその自由な改造も規制しようとする動きがカリフォルニア大気資源委員会 CARBから出てきました。
これは排気ガスに影響を与える可能性があるオートバイの社外パーツをカリフォルニアでの販売や使用をそもそも禁止するというもの。
キチンと純正と同じ交換部品としてCARBに定義されているものでなければどんなに性能の良い部品もダメです。
例外としては大統領令(EO)番号を取得しているとか、クローズドコースによるレース目的のみ。
基本それ以外は全部だめです。
なので多くの社外マフラーメーカーは今までのようにカルフォルニアに向けてマフラーの販売はできないし、オーナーが何とか入手したとしてもそれを使用してはいけない事になります。厳しいですね。
そこで
- アメリカの社外マフラーメーカーはマフラーを”レース用”として全米で販売する。
- カリフォルニアを除く他の49州用マフラー “49 State” として販売する。
この2つになったわけです。
レース用はそのままレース用ですね。
49州用はカリフォルニア大気資源委員会 CARBとは関係のないカリフォルニア以外の地域用です。50 – 1 で49ですね。計算合いました。
この2つの形態でパーツを全米に展開リリースしています。
マフラー中心でお話を進めていますが、排気ガスに影響を与える可能性があるパーツ全般に適用されるお話です。
例としては触媒システム、O2センサー、インジェクション燃調モジュール、エアフィルターキット、カムシャフト、キャブレターやジェッティングパーツなどを改造したり交換したりすることも含みます。これらはすべてCARBに定義されていなければカリフォルニアで販売したり使用することができないです。
3 日本は古くからこのシステムでやってきた
“49 State” これと似ているのが日本のシステムですね。
日本は州はないですが国が基準を設け、道交法・車検制度があるのでその基準に満たない部品を使用している車両は非合法になります。いわゆる車検非対応です。公道を走行してはいけません。
※完全にクローズドされたコースでレース競技を行う場合に使用する部品や車両は道交法・車検制度の範囲外です。
昔から日本のカスタムマフラーの場合は車検対応品とそうでないパーツがありますね。”49 State” はいわばアメリカの車検対応品に近いイメージ。アメリカに車検はないですが。
車検対応品はそれを適切に使用すれば一般公道を走行することができる車両です。車検もちゃんと受けて合格します。するはずです。
そうでないパーツは基本的にすべてアウト。仮に車検に対応していないマフラーを使っているのに車検に通ったとしてもそれは 「たまたま」 くらいの事だと思ったほうがよいです。
4 アメリカのカスタムパーツを日本で使用する場合 車検は?
アメリカにはたくさんのハーレーのカスタムパーツがあるのでバイクをカスタムしたくなった時にチョイスしたりすることも多いと思います。
でも注意しておかなければならないのはアメリカのカスタムパーツは日本の法律や車検制度を全く考慮していないことです。マフラーだけではないですよ。エアクリーナーもハンドルもミラーもグリップも全部日本の車検の事は全く考慮されていないです。
仮に先程お話しした “49 State仕様”のマフラーやエアクリーナーも日本の車検には適合しない部品です。
もし万が一の万が一の万が一くらいの確率で、日本の車検に通ってもそれは「たまたま」だと思ってください。
ほぼあり得ないとおもいますが・・・
5 まとめ
なのでまとめとしては日本の法律を遵守し、一般公道を走行する場合はアメリカのカスタムパーツは使用できないと理解しておいたほうがわかりやすいです。
例外は上げると細かくてキリがないと思います。かえってわかりにくくなるしね。
それとアメリカのカタログを見ていて “49 State仕様” とか “EPA準拠” とか記載があっても日本の車検制度とは全く関係のない単なるアメリカの諸事情だという事。
結局アメリカのパーツは日本の車検に通らない。という基本スタンスでオーケーだと思います。
追記
アメリカのバイクメーカーやアフターパーツ(社外品)メーカーはカリフォルニアの排ガス規制とカリフォルニア大気資源委員会 CARBの規制の2重構造でとても頭を悩ませているのは想像できます。
対応するとなればそれなりのコストが必要になるし、今までの顧客に提供してきた馬力やトルク、サウンドや迫力、楽しさ、好みを削らざるを得ない状況ですからね。
しかしこれらの状況に対しかなり積極的に対応し素早く反応してブランドがS&S社です。
S&S社はおもにハーレーのV-TWINエンジンを真摯に研究し続け、60年近くものあいだ世界中のハーレーファンを喜ばせてきた老舗中の老舗です。
特にネックになっているカリフォルニア大気資源委員会 CARBによる社外品の販売規制についても順次申請し、大統領令(EO)番号を取得しているようです。
これを素早く適切に対応できるのはS&Sの技術力とアフターパーツメーカーとして真摯に取り組んでこられた実績の賜物だと思います。
例えばミルウォーキーエイトのファットボブのマフラーで人気のあるグランドナショナル2in2マフラー。
このマフラーは当初、49 State(カリフォルニアには販売できない)仕様でリリースされました。
しかし現在は50 State仕様にアップデートし、全米で販売できる製品になっています。カリフォルニアでも大丈夫です。
日本の私たちにとっては一見直接関係ない話のようですが、アメリカのマフラーは日本でも人気が高く多くの支持を受けているのも事実。
およその概要や今後の流れを知っておくことはいいことだと思います。